企業経営には二つの軸があります。
一つは、事業のアイデアを考え、それをビジネスモデルにし、資金や人を集め、ビジネスモデルを推進する仕組みをつくり、計画を立てて、実行していくという、「事業推進」の軸です。
もう一つは、社員のレベルをアップし、その社員がスムーズに成果を生み出せる組織体制を整備する、人を中心とした「組織力強化」の軸です。
スポーツにたとえると、「事業推進」は試合に出て戦うことで、「組織力強化」は普段の練習・トレーニングと言えます。
この2つのことは表裏一体で、どちらに対する取り組みも大切です。練習・トレーニングだけでは意味がありませんし、試合に出るだけでは持続的に結果を出す力をつけることはできません。
「事業推進」については、普通はあまり意識しなくても社員はみな取り組むものです。
ただ「組織力強化」については、経営者がしっかりと意識しないとどうしても後回しになってしまいます。
なぜなら、組織力強化の取り組みはなかなか効果が見えにくいですし、取り組まなくても表面上は事業はそれなりに動いていくからです。
でも事業について持続的に業績を高めていこうと思ったら、一流のスポーツ選手が高度な練習やトレーニングを怠らないように、切れ目ない組織力強化を続けていく必要があります。
人に関することをほったらかしにしていると、いつの間にか組織には活力がなくなり、メンバーの心が離れ、協力できないようになり、メンバーの仕事へのコミットメントが弱まり、良い人材が採用できなくなり、さらに組織の活力がなくなって、業績不振になっていくという悪循環におちいってしまいます。
それも気がつかないうちに、いつの間にかにこの悪循環は進行していきます。
それでは組織力を強化するために、どんな手順で取り組んだらよいのでしょうか?
順を追って説明しましょう。
目次
1.経営幹部や人事担当者の認識の確認
まずは、社長など経営幹部や人事担当者に、会社の問題と思われる点と会社の目指す姿(理想の姿)について話してもらいます。
評価判断を加えずに、経営幹部と人事担当者が考えている会社の問題と会社にこうなって欲しいというイメージをまずざっくりと明らかにします。
2.組織力を強化するために知っておくべきことの共有
経営幹部、人事担当者や組織力強化プロジェクトのメンバー(次世代のリーダー)などのキーパーソンを対象に、組織力を強化する場合にどんなことを意識しなければならないのかを具体的な検討に入る前に理解してもらうために、次のような内容のレクチャーを行って、大切なことを共有し、キーパーソンの目的意識を高めます。
①仕事をする本質的な意味とは何か
②生産性を上げるためには本音が言い合える組織をつくる必要があること
③お客様の真のニーズをつかむためのコミュニケーションの方法
④人が優れた価値を生み出すために最も効果的な姿勢
3.組織の実態調査
2.の組織力を強化するために大切なことを踏まえた上で、1.で確認した組織に対する認識が正しいかどうかを確認するため、組織の実態調査を行います。
まずは下記のことを中心に、定量的な組織度診断を行います。
①会社方針は明確で、社員と共有できているか?
②社員が安心して働ける職場環境が整備されているか?
③マネジャーはメンバーがパフォーマンスを上げられるよう適切な指導や支援ができるか?
④マネジャーは率直に話ができる風通しの良いチームをつくっているか?
そして上記の調査結果を検証する意味で、社員に対してインタビュー調査を行います。
4.会社の「現状」の共有と「目指す姿」の明確化
まず3.で行った組織の実態調査結果を経営幹部、人事担当者、組織力強化プロジェクトのメンバーなどのキーパーソンで共有し、組織の課題を明確にします。
その上で、自分たちの会社をどのような会社にしたいか、どんな状態にしたいかなど「目指す姿(ビジョン)」をキーパーソンで話し合い、明確にします。
5.取り組む課題と優先順位の決定
4.のキーパーソンによる現状認識と会社の「目指す姿(ビジョン)」を踏まえて、組織力を強化するために、下記のような課題の内どんな課題の解決に、どんな順番で、どれくらいの期間(半年、1年、3年など)で取り組むかを決めます。
①会社方針(企業理念、行動理念、経営計画、人事理念など)の明確化
②組織体制の整備
③人事制度の整備
④マネジャーやメンバーの教育
たとえば、企業理念と経営方針はすでにあるので、まずは社員の行動理念と人事理念を策定して、それに基づいて社員の成長を促す評価制度をつくり、その評価制度をしっかり運用できるように、継続的にマネジャーに対して研修を行うというふうに、組織力強化のため取り組む課題と順番を決定します。
6.具体的な課題ごとの取り組み基本方針の策定
取り組む具体的な課題と順番が決まったら、具体的な課題に取り組む基本的な方針を、下記の項目について決め、それに基づいて解決策を実行していきます。
①目的
②会社や社員の現状
③目指す姿(ゴールイメージ)
④解決方法の内容
⑤スケジュール
➅予算
7.組織力を強化していこうとする際の基本的な考え方
人的な部分から組織力を強化していこうとする場合、まず大事なのは社員の方の目的意識を高め、自ら発想し、行動し、優れた価値を自力で生み出せるように、キーパーソンの意識を高めることです。
一言でいえば、社員の中の一部の方が、自分の心の底から「こうなりたい」という自分の在り方を明確にし、そこから発想し、行動ができるようにすることです。
社員のもともと意識の高い方が更に自律性を高めると周りの方たちにも良い影響を与えるようになります。
まず社員個人個人が自律性を高める方向で変わっていき、その自律性の高い社員が迷わず、スムーズに成果を上げられるように、組織体制をしっかり構築していくという順番が大事です。
自律的な社員が迷わずに仕事をするためには、
①会社が方針(企業理念、経営方針、行動理念、人事理念など)を明確に示してそれをちゃんと社員に理解させること
②社員が安心して働けるような環境(セクショナリズムが無い、健康を害するような労務環境ではない、不正を見逃さないなど)をつくること
③マネジャーがメンバーをしっかり指導したり、支援したりすることができること
④言いたいことを言いたいときに言える風通しの良い風土であること
などの組織体制を整備することが必要です。
ここでも、社員個人と組織が両輪のようにレベルと上げていく必要があります。
どちらか一方ではだめなのです。
ぜひ長期的な視野に立ち、社員の皆さんを最大限に活かすために、組織力の強化に取り組んでください。
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