ちょっと前になりますが、「仕事は楽しいかね?」(デイル・ドーテン著)というベストセラー本がありました。
大雪で閉鎖になった空港で、偶然出会った著名な実業家の老人に一夜限りの講義を受け、主人公の仕事観が大きく揺さぶられていくという物語です。
読んだ方もいらっしゃるかもしれませんが、あなたにも同じ問いかけをしたいと思います。
「今、あなたは仕事を楽しんでいますか?」
仕事は本来楽しいもののはずです。
仕事は必ずその価値を受ける人(顧客)がいて、仕事がしっかりできていれば誰かの役に立ち、喜ばれるはずです。
人は誰かに喜ばれることを本能的に求めています。
人は自分自身が何かを達成したときに喜びを感じますが、やはり自分が何かをしたことによって誰かに喜んでもらえたときの喜びは、自分自身に対して何かを達成したときよりも何倍も大きいのではないかと思います。
「人を喜ばせられる力のある人間になりたい」と私たちは心のどこかで思っているのではないでしょうか。
あなたが仕事をすることによって価値を受ける人というのは、いわゆるお客様であったり、上司であったり、自分の会社の経営者であったり、同僚であったりします。
人生でいえば、家族がその対象になるでしょう。
感謝されるかどうかは別として、しっかりと仕事をすれば必ず誰かに価値を提供していることになります。
ですから仕事をすることは本来楽しいはずなのです。
でも、仕事をしていてもそんな楽しさを感じることはできないという人も多いのではないかと思います。
どうしたら、仕事に楽しさを感じられるようになるのでしょうか?
仕事にわくわくしながら、楽しんで取り組める方法をお伝えします。
1.人はどんな時に仕事に楽しさを感じるのか
あんたはどんな時に仕事に楽しさを感じるのでしょうか。
誰かに褒められたり、感謝されたときでしょうか?
会社に評価され、給料や賞与がアップしたときでしょうか?
それとも、何か目標としていたこと、例えば売上3000万円という数字を達成したときでしょうか?
何が良い結果が出たとき、目標としていた何かを実現できたときなどは確かにうれしさは感じますが、楽しいという感覚はないのではないかと思います。
どうも楽しさというのは、何かに向けて行動している「過程」で生じてくるもののようです。
・何かに夢中で取り組んでいるとき
・今までの自分では考えられないようなことにチャレンジしているとき
・できなかったことができるようになり、自分の成長を実感できるとき
・自分の行動が、着実に結果に結びついているとき
・共通の目標に向かって、仲間と何かを成し遂げようとしているとき
何か今までの自分の能力や領域を超えて少しでもチャレンジする中で、望む成果が得られたり、自分の成長を感じることができたりした時、人は楽しさを感じることができます。
ただ単に決められた仕事をこなしているだけではなく、難易度が高くても自分が思いついたことの実現に向けてチャレンジしているとき、それがどんなに小さなチャレンジであっても私たちはわくわくした感覚を持ちます。
冒頭でご紹介した「仕事は楽しいかね?」という本の中にこんな言葉があります。
「人生は進化だ。そして進化の素晴らしいところは、最終的にどこに行き着くのかまったくわからないところなんだ。」
私たちは本能的に人に喜ばれることを求めていますが、そのために本能的に進化したいと望んでいるということです。
毎日毎日、少しでも自分を成長させたい、進化させたいと心の底では思っているのです。
ではどうすれば、毎日少しずつでも自分を進化させることができるのか?
先ほどの本の中では、こんなことを言っています。
「試行錯誤をして、手当たり次第にあれこれやってみること」
「人は変化は大嫌いだが、試してみることは大好きなんだ」
「チャレンジの中でも一番大切なのは、心を開くことだ。だけど一度開いてしまえば、あとはそこにいろんなアイデアが流れ込んでくる。それこそがきみときみの仕事に対して僕が望んでいることなんだよ」
今の自分を超えて、どんなに小さなことでも構わないから、思いついたアイデアにどんどんチャレンジしていこうということですね。
ではどうしたらチャレンジする習慣を身についけることができるのでしょうか?
それを次にお話ししたいと思います。
2.どんな小さなことでもチャレンジする習慣を作る
自分の仕事を楽しく、ワクワクさせるのは、どんな小さなことでも自分で思いついたことにチャレンジしていくことです。
それをとにかくやってみるということを続けることです。
どんな小さなことでも「こうしたらいいんじゃないか?」ということを思いついたら、それを実行し、実行したことがうまくいこうが行くまいがそれを振り返り、そこから気づきや学びを得て、次はこうしようというアイデアに基づいてまた行動していく。
いわゆる「試行錯誤」です。
「試行錯誤」を続けることで自分を成長させ、進化させるのです。
とにかく思いついたことを躊躇せずにやってみるということです。
常識的な方法で仕事をするということでも、誰かが成功したやり方をまねしてやるということでもなくて、自分が「こうしたらいいんじゃないか?」と思いついた、自分自身から出たアイデアをどんどんやってみようということですね。
すべてが自分のアイデアでなくても、一部でも自分のアイデアが入った仕事をするということは、その仕事に対するコミットメントの度合いが変わってきますし、自分のドライブで仕事をしている感覚が強くなってきます。
自分がしっかりペダルをこいで、自転車で前に進んでいるという状態ですね。
ただここで大事なのは、「試行錯誤」をどんどんやるのはいいのですが、どうせやるなら「“質の高い”試行錯誤」を重ねたいということです。
その方が自分が望む結果をより早く、より多く生み出しやすくなりますよね。
それでは、「質の高い試行錯誤」はどうやったらいいのかについてお話ししたいと思います。
3.「質の高い試行錯誤」をするために大事なこと
「試行錯誤」とは、発想(こうしたらいいんじゃないか?)→ 行動 → 結果 → 気づき・学び → 発想(次はこうしたらいいんじゃないか?)というサイクルです。
あなたが望む結果を得られやすいですし、経験から学び成長することができる一石二鳥の最強のサイクルです。
一般的に言われるPDCAサイクルに近いですが、最後がLearningですので、私はこのサイクルをPDCLサイクルと呼んでいます。
ではPDCLサイクルが「試行錯誤」のフレームワークとすれば、「質の高い試行錯誤」とどこが違うのでしょうか?
より自分が望む結果や学びを得るためには、質の高い行動が必要です。そして、質の高い行動をするためには、質の高い発想をする必要があります。
質の高い発想をするということが、質の高い試行錯誤をするための最大のポイントです。
それでは、質の高い発想をするためには、どうしたらよいのでしょうか?
人の心は大きく分けると二つあると考えてください。
一つは、現実からの影響を受け常に揺れ動いている心と現実の影響を受けずに揺れ動かない心の二つです。
何となくイメージできますか?
揺れ動く心とは、たとえばある日に大事なプレゼンがあるという現実に対して、「よし頑張ろう!」という気持ちがある一方で、「うまくいかなかったらどうしよう?」「できれば誰かに代わって欲しいな?」というようにプラスの矢印が出たり、マイナスの矢印が出たりして綱引きをしている心です。
そして、状況によってそうした心が強くなったり、弱くなったりして、海面のように常に波を打っている状態です。
このように揺れ動く心は綱引きをしていて葛藤が起こっているので、ストレスフルで、弱っていき、あまりパワーがありません。
どちらかというと不安や恐怖などに支配されやすい心で、現実に立ち向かっている強さがありません。
もう一つの揺るがない心というのは、人間一人一人の心の奥底にある、どんなときでも「自分はこうありたい」という、自分が大切にし続けたいと思う「在り方」や「生き方」のことです。
企業が自分の会社は「こうありたい!」「こんなことを実現したい!」ということを表したものを「企業理念」と呼ぶのに対して、自分のありたい姿のことを「人生理念」と呼んでいます。
この人生理念は、「いつも楽しくありたい」「人を笑顔にしたい」「いつも太陽の様でありたい」「堂々と生きたい」など一人一人の心の底からの自分はこうありたいという強い想いです。
この人生理念は現実の影響は受けることがなく、どんな状況でも揺るがない、とてもパワフルな心です。
先ほどの揺れ動く心とは違って、現実に向き合っていく力強さがあります。
私たちは通常は現実対応をしているので、揺れ動く心でものごとを判断し、発想する割合がとても高いのです。
多くの人は自分の9割ぐらいの発想は、揺れ動く心から行っていると考えられます。
揺れ動く心からの発想は、基本的に不安や恐怖に影響されることになりますし、表面的で現実対応的な発想になってしまうので、あまり良い発想が生まれません。
それに対して、揺るがない心=人生理念から発想すると、自分自身の深い想いから発想するので、自分らしく、一貫性の取れた発想をスッキリとできるようになります。
ここが、質の高い発想をし、質の高い行動をし、質の高い結果を得て、楽しく仕事をするための最大のポイントです。
自分の揺るがない心=人生理念を明確にして、そこを軸にして矢印を出して、発想することです。
ただ言っておきたいのは、揺るがない心がいけないわけではありません。
揺るがない心=人生理念に軸をおいてそこから矢印を出すことは、心の中に強いリーダーを打ち立てることになるので、揺れ動く心もそのリーダーにリードされて、リーダーに近い心が強くなり心全体が一貫性を持ちやすくなるのです。
これができている人はなかなかいないのですが、世の中で大きなことを成し遂げる人や組織の中で高い業績を上げている人は、この人生理念をしっかりと持ち、そこから発想して試行錯誤をして、望む結果を得ているのです。
だから、うまくいっている人は、いきいきと楽しそうにそしてパワフルに仕事をしているのです。
まとめ
仕事をわくわく、楽しくするためには、質の高い試行錯誤をたくさんする必要があります。
そして、質の高い試行錯誤をするためには、まず質の高い発想をし、質の高い行動をする必要があります。
そして、質の高い発想をするためには、揺るがない心=人生理念に軸をおき、そこから発想することが大事です。
ただ難しいのは、自分の人生理念を明らかにして、言語化し、それを大事にしながら発想しようとしても、すぐに揺れ動く心での発想に戻ってしまうということです。
何でもそうですが、はやり継続的なトレーニングによる習慣化が必要になってきます。
また同じ考え方を持ち習慣化しようとする仲間と一緒に活動するということもとても効果的です。
人間の進化にとってもっとも可能性のある分野です。
ぜひまさに試行錯誤しながら、自分のものとしてください。
コメントを残す