相手の本当の期待に応える仕事をするためには、「仕事の本質的な仕組み」を理解することが必要だということを最初にお伝えしました。
⇒相手の期待に応える仕事をするには① ~仕事の本質的な仕組み~
その「仕事の本質的な仕組み」からすると、お客様や上司の本当の期待に応えるためには、まず相手の「本当の願い(真のニーズ)」を知る必要があり、そのためには相手と無意識レベルでの信頼関係(ラポール)を結ぶ必要があることを前回お伝えしました。
⇒相手の期待に応える仕事をするには② ~相手の「本当の願い」を知る方法~
今回は、相手の本当の期待に応えるためには、相手の「本当の願い(真のニーズ)」を知るだけではなく、自分が仕事や人生に向かっていくときに大切にしている想いを明確にすることが大事だということをお伝えしたいと思います。
1.「自分の本当の想い」が大事
相手の本当の期待に応える仕事をするために、相手の「本当の願い(真のニーズ)」を感じ取ることが極めて大事ですが、それと同時に、できる限りの価値を提供しようと思った時、「自分の本当の想い」がとても大事になってきます。
お医者さんの例で考えてみましょう。
たとえば、「多くの人を身体的・精神的な苦しみから救いたい」「患者さんを笑顔にしたい」ということを本当に思いながら医療行為をしているお医者さんとそういった想いはなく、お金をたくさん稼ぐために医療行為をしているお医者さんがいたとしたら、長い目で見て患者さんにとってどちらがより良い医療行為をするかは明らかだと思います。
「お客様に喜んでもらいたい」と思いながら仕事をしている営業パーソンと自分が出世することが第一の営業パーソンとでは、お客様に提供する価値の質が微妙に異なってくると思います。
ですから、お客様の本当の願いを叶えるために、最大限の価値を提供し、お客様の期待に応えようと思った場合、「自分の本当の想い」を明確にすることが、とても大事だということがわかると思います。
以前私が勤めていたメーカーで、業績の高い営業パーソンを5人ほどインタビューしたことがありました。
ほとんどの方が職場でも他の営業パーソンの模範になるような係長クラスの人たちでした。
やはり皆さん、「お客様に感謝されたい」「お客様の役に立ちたい」などの想いをしっかり持っていました。
そうした想いを持っているから、お客様に最大限の価値を提供することができ、お客様の本当の期待に応えることができているので、皆さん業績が高かったのだと思います。
でも「自分はそんな想いを持ったことがないなぁ」という人もいるかもしれません。
それではどうしたら、そうした「自分の本当の想い」を持つことができるようになるのでしょうか?
2.2つの心
「自分の本当の想い」を明確にしようと思ったら、人の心は2つに分けることができるということを知る必要があります。
2つに分かれる心とは、現実からの影響を受け、常に揺れ動いている「揺れ動く心」とそうした現実からの影響を受けない「揺るがない心」です。
たとえば、あなたが営業パーソンで、今期3000万円の売り上げを上げなければいけないという現実があったとしましょう。
そのことに対して「がんばろう」という気持ちがある一方で、「数字を達成するということにあまり気持ちが入らないな」「テレアポしてもほとんど結果が出ないよな」「顧客開拓のアイデアが浮かばないな」などネガティブな気持ちに駆られたりします。
要するに、目標を達成しなければならないという現実に対して、心が揺れ動いて、すっきり前に進めない状態です。
前向きな気持ちの反面、迷いや不安が出てきて、ストレスフルで、心が弱っていく状態ですね。
こうした「揺れ動く心」の状態は、海の波間でほんろうされているようなもので、良い発想、判断、決断などができません。
ところが、こうした「揺れ動く心」の奥に、もう1つの心「揺るがない心」があります。
あなたは、あなたの中にあるこの「揺るがない心」の存在を知っていますか?
海を考えてみてください。
海面はいつも風などによって、波立ち、常に揺れ動いています。
ただその海を深く深く潜っていくと、ガツンと揺るがない海底=大地にぶつかります。
これが「揺るがない心」、すべての人が持っている大地です。
でもほとんどの人がこの自分の大地の存在をあまり意識していません。
普段は日々起こる現実に対応するので精一杯で、「揺れ動く心」から発想し、判断し、決めることがほとんどなので、この「揺るがな心」というあなたが寄って立つべき基盤が見えていないのです。
この「揺るがない心」は、あなたがいろいろな経験を重ね、様々なことを感じる中で、あなたが生きるにあたって本当に大切だなと思っている、心の底からの想いです。
「揺るがない心」とは、「お客様に喜ばれたい」「患者さんを苦痛から救いたい」「活き活きと輝きたい」「世の中の役に立つものをつくりたい」「いつも元気でいたい」など、自分もそうありたいし、多くの人がそうであって欲しいという想いです。
こうした「自分の本当の想い」は、現実からの影響をほとんど受けず、迷いや不安が生じないので、この「自分の本当の想い」を軸にすると、スッキリと発想することができ、決断し、前に進むことができるのです。
だから、お客様の本当の願いを叶えるための最大限の価値を提供できるようになるのです。
それでは、どうしたらこの「自分の本当の想い」を明らかにすることができるのかについて、次に考えてみたいと思います。
3.「自分の本当の想い」を明確にする方法
「自分の本当の想い」を明確にする方法はとても簡単です。
自分で自分に問いかけて、考えるということです。
「自分は何を大事にしているんだろう?」「どんな生き方をしたいのだろう?」「自分は自分の命を使って本当に何をしたいんだろう?」「自分は何をすると一番楽しいのだろう?」などを自分に問いかけ、自分の心の底にある想いを探るのです。
いわゆる自問自答です。
自問自答ですが、普段の日常の現実に対する自問自答ではなく、どちらかというと本質的で、自分の生き方に関する問いです。
こういう問いをすることがなかなかないので、「自分の本当の想い」が明確にならないのです。
私の「自分の本当の想い」が明確になったときは、あるきっかけがありました。
私は大学を卒業して銀行系の不動産会社に勤めていました。
最後は総務部に所属していたのですが、1990年代末にバブルの負の遺産のため証券会社や銀行などの金融機関がバタバタと倒れ、業界が再編されたときがありました。
私が勤務していた親会社の銀行も経営不振に陥り、国有化され、関係会社も清算されることになりました。
要するに会社が無くなることになったのですが、ただ無くなると言っても通常の倒産のようにいきなり倒れるのではなく、政府の政策としてゆっくりと進みました。
銀行が潰れるという日本経済の根幹を揺るがす状況が起き、自分の会社や自分の雇用がどうなってしまうのかわからず、生きた心地がしない不安の中で、深く、本質的な自問をすることになりました。
「働くってどういうことだろう?」「生きるってどういうことだろう?」「家族は自分にとってどうゆう存在だろう?」「自分は本当に何がしたいんだろう?」という問いが自分の中にたくさん出てきました。
そうした自問自答をしながら数カ月が経った時に、突然ある想いが立ち現れました。
「会社が潰れて社員が路頭に迷ったりしないように、人事の分野から企業を強化することに貢献したい」
私が人生で初めて「志」と言えるものを得た瞬間でした。
本当に、この想いがまるで降ってきたように現れて、それに突然出会った感じでした。
でもこの心の底から湧いてきたような「自分の本当の想い」に出会ったとき、本当に血が逆流するような純粋なうれしさと興奮を覚えました。
そして、「会社が潰れて社員が路頭に迷ったりしないように、人事の分野から企業を強化することに貢献したい」という想いが仕事をする上での私の軸になり、そこから発想するようになり、行動するようになりました。
私にはこうしたきっかけがありましたが、きっかけが無くても自分に本質的な問いかけを続け、考えることで「自分の本当の想い」に出会うことができます。
ぜひ自問自答してください。
「求めよ、さらば与えられん」で、かならず「自分の本当の想い」が明らかになります。
もしどうしても自問自答することで想いが見つからないと思ったら、レベルの高いビジネスコーチにコーチングを受けることによって、「自分の本当の想い」を明らかにすることも一つの方法です。
他の人に問いを投げてもらい、考えるのです。
まだ「自分の本当の想い」が明らかになっていない方は、ぜひ「自分は本当は何がやりたいのだろう」という問いを自分に投げ続けてみてください。
まとめ
相手の本当の期待に応える仕事をするためには、相手の本当の願いを叶えるできる限りの価値を提供する必要があります。
そして、相手に提供するできる限りの価値の質を高めるのは、「自分の本当の想い」です。
その想いを明確にして、その想いを軸に発想し、決断し、行動すると今までよりも質の高い価値を提供できるようになり、相手の本当の期待に応える仕事ができるようになるのです。
ぜひ、あなた自身の「本当の想い」を、深く深く自問自答し続けることによって明らかにしてください。
全く次元の違った仕事や生き方をすることができるようになります。
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