あなたは、好むと好まざるとにかかわらず、現実に向かっていかなければなりません。
それは私たち人間が生きている限り、運命づけられています。
現実に向かうことによってつらいこともありますが、楽しいこと、うれしいこともたくさんあります。
時には、会社からまたは上司に期待されて、仕事上で大きな課題に向かっていかなければならない時もあることでしょう。
もちろん自分も周りからの期待に応えて、その課題を成し遂げたいと思っているけれども、プレッシャーも半端じゃないということもあります。
そんな時に、そうした現実に立ち向かっていけるパワフルな心を持てたらいいですよね。
でも実際は自信がなかなか持てなかったり、心細かったり、迷ったりするのが普通で、心がとても苦しかったりするはずです。
そこで必要なのは、心の仕組みを知って、自分で心をしっかりコントロールしていくことです。
今回は、困難な状況の中にいても、自然にパワフルな心を持つ方法についてお伝えします。
1.二つの心
パワフルな心を持つためにまず大事なことは、あなたの心を二つに分けて考えることです。
私たちの心は、現実に影響されて常に揺れ動いている部分とそうした現実に対してビクともしない揺るがない部分とに分かれます。
それを、「揺れ動く心」と「揺るがない心」と言います。
「揺れ動く心」とは、たとえば今日大事なお客さんに対するプレゼンをするという現実があったとして、「よし絶対に成約に結びつけてやるぞ!」という気持ちがある一方で、「失敗したらどうしよう?」とか「あそこの担当者は批判的なところがあるから、突っ込まれたらやだなぁ」など、ポジティブな気持ちがある一方で、ネガティブな気持ちも同時に発生して揺れ動いているという心の状態です。
また、自分の周りの同僚が忙しそうに働いているという現実に対して、「お手伝いしますと言おう!」という気持ちがある一方で、「断られたらイヤだなぁ」とか「忙しさに自分も巻き込まれたら困るなぁ」というように揺れ動く状態です。
ただ、いろいろな現実に対して、ポジティブな気持ちが出たり、ネガティブな気持ちが出たりするのは実は心が健康な状態です。
現実に対してどう対応しようかと考えているわけですからね。
ただ、ポジティブな感情が強くてすっきりと踏み出せればいいのですが、ポジティブな感情とネガティブな感情が引っ張り合って迷っている状態というのはとてもストレスを感じます。
これは心の中で葛藤が起こっているので、苦しいですし、心は弱っていきます。
綱引きをしている間は当然しんどいですよね。
この現実に対して常に反応して揺れ動いている「揺れ動く心」に対して、私たちの心の奥底には現実からの影響を受けない「揺るがない心」があります。
この「揺るがない心」というのは、あなたの価値観、信念、志、良心などに近いものですが、実はもっとそれらよりも深いあなたの想い・願いです。
どんなときにでも、あなた自身が本当に望んでいる、あなた自身の「あり方・生き方」です。
「そんなこと考えたこともないよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、すべての人は、この「揺るがな心」というものを必ず持っています。
何か高尚なものというよりも、もっとも自分らしい想いや願いと言ってよいかもしれません。
それを自分らしいキーワードに表したものを、「人生理念」と言います。
あなた自身が心の底からこうなりたいなと想う状態です。
たとえば、「いつも笑顔でいたい」とか「堂々と生きる」であったり、単純に「無邪気に楽しむ」ということであったり、「太陽」「海」なんていうイメージであったりします。
その言葉を思い出すと、心がすっきりしたり、懐かしい気持ちがしたり、自然体に戻れたり、わくわくしたりするようなキーワードです。
この「人生理念」は、現実からの影響によって揺れ動くことはありません。
この心の底からの想いや願いは、夢とは違っていつもこうありたいというあなたの「あり方・生き方」なので完了するということはありません。
極端に言えば、死ぬぎりぎりまで追求し続けたいあなたの「あり方・生き方」なので、とてもパワフルで、迷いがほとんど出でることはありません。
だから、「揺るがない心」なのです。
2.「揺るがない心」に軸をおく
「揺れ動く心」は常に変化する現実に対応していくために常に揺れ動いています。
ある出来事に対してポジティブな感情が出たり、ネガティブな感情が出たりします。
たとえばメールを出したのに相手からなかなか返事が来ないと、不安になったり、相手への怒りの感情が出たりしますが、そうした感情が出た後にメールが届くと一気にうれしくなったり、相手への見方が変わったりします。
でもこれは当り前のことです。
状況を見極めようとしているのですから、良い感情が出たり不安な感情がでたりして、判断しているので、先ほどお伝えしたとおり、揺れ動くことがいけないことでもありませんし、逆に心が健康な状態です。
ただこの「揺れ動く心」は常に不安定なので、この「揺れ動く心」から発想し、決断し、行動すると、その発想も、決断も、行動も不安定になるということです。
特に「揺れ動く心」では不安や恐怖、怒りなども発生するので、そうした感情から発想するとものごとはうまくいきません。
自分の心が混乱しているときに発想したり、判断したことを実行しても、あまりうまくいったためしはないはずです。
怒りに任せてやってしまったことは、だいたい後悔することが多いのではないかと思います。
「揺れ動く心」からだけ発想し、決断し、行動することは、混乱の世界ですし、ストレスフルですし、悪循環に陥り、心が弱っていきます。
ですから、あなたが発想する基盤を、安定し、不安・恐怖・怒りなどが発生しない「揺るがない心」に移すことがとても大切です。
ほとんどの人が、自分の発想の9割を「揺れ動く心」から行っていて、常に疲れ、心のパワーを弱らせています。
思い当たるのではないかと思います。
一方で、「揺るがない心」から発想し、決断し、行動する割合が高い人がいます。
こうした人は、現状ではたぶん世の中で数%ぐらいだと思いますが、安定した心から発想するので、良いアイデアが湧き、確信に満ちた決断ができ、最善の行動ができるので、優れた結果を生み出すことができます。
世の中で大きなことを成し遂げる人や仕事で高い業績を上げ続ける人は、「揺るがない心」に軸をおいているのです。
ただ、それだけの違いと言ってもいいかもしれません。
「揺るがない心」に軸を置く方が、自分の心がとても安定してパワフルになりますし、良い発想、良い決断、良い行動ができるようになるので、自分が望んでいる結果を生み出す確率が劇的に高まります。
もし、自分自身を変えたいと思っている人がいるとしたら、軸の置き場所を「揺れ動く心」から「揺るがない心」に変えるだけでいいのです。
そうすれば、自分を変えようとしなくても、自然に変わることができるのです。
3.「揺れ動く心」を客観的に眺める
自分の軸を、「揺るがない心」に置くだけでよいのかというとそれだけでは少し不十分です。
「揺れ動く心」は常に変化する現実に対応するために、揺れ動いています。「揺るがない心」に軸を置いたとしてもその状況は変わりません。
それではどうすればよいかというと、「揺るがない心」にしっかりと軸を置きながら、「揺れ動く心」を客観的に眺めるということです。
客観的に観察するということです。
前にも書きましたが、現実に対して反応し、いろいろな心が出ることは心が健康な状態です。
いろんな心が生じますが、それをちゃんと見つめて、その存在をしっかりと認めてあげることが大切です。
たとえば、知り合いが成功したときに、自分も頑張らなくちゃという心がある一方で、妬む心が出たり、うまく利用してやろうという気持ちが出たりします。
こういった時に、人が成功したときに妬んだり、利用しようなんて思っちゃダメだと自分の中に生じたネガティブな心に蓋をしようとしてはだめなのです。
自分の中に生じた心に蓋をしようとしたり、存在を否定しようとするとかえってその心は水面下で大きくなっていきます。
「どんな心が自分の中にあってもいいじゃないかと」と自分の心すべてを認めてあげることが大事なのです。
「こんな時に自分は嫉妬したりするんだなぁ」と自分を客観的に、少し他人事のように観察してください。
そうすると、海の表面はいつも波立っているけれど、自分は安定した海の中にいるので、どっしりとしていられるということです。
混乱やストレスフルな心の状態から離れ、客観視できるようになると仕事のモヤモヤはとても小さくなっていきます。
さきほど高い業績を上げ続ける人は、軸を「揺るがない心」においているという話をしましたが、一方でそういう方たちは自分の心や状態を客観的にみられるという特徴があります。
4.「揺るがない心」に軸を置く効果
「揺るがない心」に軸を置くと、「揺れ動く心」を客観的に見ることができる、どんな心があってもそれを認めることができるという、余裕を持てる効果があります。
ただ、それ以外にとても大きな効果があります。
「揺るがない心」に軸を置くということは、自分の心の中に「ブレないリーダー」を打ち立てたのと同じ状態です。
自分はこうありたい、こんなことを実現したいという強い想いを持ったリーダーが出現することになります。
そうしたリーダーが出現すると、いろいろな心をもった「揺れ動く心」の中にあるリーダーに共感する心達が勢いづくことになります。
ネガティブな心達がなくなるわけではありませんが、リーダーに影響されてそれに共感する心達がパワフルになり、リーダー(人生理念)に同調するようになるのです。
つまり心全体がリーダー(人生理念)の目指す方向に統一されるということになるので、心の中に一貫性が出てきます。
そうすると、心全体が当然パワフルになり、望んでいる結果を生み出すことができやすくなるということです。
心の仕組みは、世の中の仕組みと同じなのです。
このことに気づくと、人や組織に関することがスムーズに理解できるようになります。
自分も組織も上手にコントロールすることができるようになります。
5.まとめ
ここまで、現実に立ち向かっていく、パワフルな心の持ち方についてお伝えしてきましたが、その方法についてまとめておきましょう。
【心をパワフルにするステップ】
①「揺れ動く心」を存在承認する(「どんな心があってもいいじゃないか」)
②「人生理念」をいつも思い出す
③「人生理念」からの発想(直観)にしたがって素直に行動する
ポイントは、自分の「人生理念」を常に思い出し、そこから発想し、行動するということです。
忙しかったり、余裕がなくなってきたりするとすぐに「揺れ動く心」からの表層的な発想になり、混乱と悪循環の状況に戻ってしまいます。
「揺るがない心」にどっしりと腰を下ろして、「揺れ動く心」を客観的にやさしいまなざしを向けるように心掛けてください。
あなたは、現実にしっかり立ち向かっていけるパワフルな心と自分自身の変化=成長を無理なく手に入れることができるようになります。
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