今回の新型コロナウイルスの感染拡大が、世界経済や私たちの生活に与える影響が浅いのか深いのかは今のところわかりません。
ただ、経営者の方々と話をしていると、この誰もが自分の存在価値を問われる中で、私たちが当たり前だと思っていた固定概念や価値観が大きく崩れ、今までとは全く違った考え方や行動が求められる時代になっていくのではないかと感じます。
危機的な状況に直面したときに、よく「基本に返れ」とか「原点に戻れ」などの声が聞こえてきますが、今まさにそうしたことが求められているのだと思います。
そのことは多くの人が何となく、うすうす感じているのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
時代はどうも大きく変質していくことは、間違いないようです。
そんな時代の中で、私たちは、一人ひとりが自分で考え、自分で何をするかを決定し、周りと協力しながら行動し、結果に最後まで責任を持つ「リーダー」になることを求められていると強く思います。
誰かだけにリーダーシップを任せるのではなく、すべての人が自律的に考え、行動できる「リーダー」になる必要があるのではないかと思います。
すべての人がリーダーになるとは、リーダーシップを発揮するとはどういうことでしょうか?
目次
1.自分で自分をリードする「リーダー」とは?
今までは、誰々さんがリーダーで、それ以外の組織のメンバーがフォロアーという関係が普通でした。
そうではなく、それぞれの役割は違っても、すべての人がリーダーで、それぞれの役割においてリーダーシップを発揮し、そのリーダーたちがお互いに平等な立場で協力しながら、共通の目指す姿(ビジョン)を実現していくという関係が生まれるということです。
すべての人がリーダーであり、同時にフォロアーでもあるという関係です。
その時その時の状況によって臨機応変にリーダーシップを発揮したり、フォロアーシップを発揮したりして、最善の状態を生み出していくということです。
ここで、リーダーシップとは何かということを定義しておきましょう。
「リーダーシップとは、自分、メンバー、チーム、会社や社会が本当に願っていることを感じ取り、その願いを叶えるために目指す姿(ビジョン)を明確に描き、そのビジョンを実現するために、自ら発想し、決断し、周囲の自分と同等のリーダーたちを最大限に活かし、協力し合いながら、結果を生み出すことに責任を持つこと」
これをもう少しわかりやすい表現でいうと、全員が独立した社長のような人々が、ある目的を達成するために集まり、それぞれがそれぞれの役割においてビジョンを持ちながら、その実現を目指してお互いを活かし合い、協力し合っていくような状態です。
お互いが結果を生み出す責任を持ちながら、平等にそれぞれが独立しながら協力し合っていくという関係です。
いかがでしょうか?共感できますか?
つまり、メンバーや組織をリードする人だけがリーダーではないということです。
自分が本当に願っていることを自分自身が感じ取り、その願いを叶えるために目指す姿(ビジョン)を明確に描き、そのビジョンを実現するために、自ら発想し、決断し、周囲のリーダーを最大限に活かし、協力し合いながら、結果を生み出すことに責任を持つ人、つまり自分で自分をリードする「リーダー」と言えますし、これからはすべての人がそうなった方がよいと強く思います。
最初に時代はすべての人がリーダーになることを求めていると言いましたが、実はいつの時代においても、すべての人が自分で自分をリードする「リーダー」になるべきだと思ってきましたし、すべての人が自律的に実現したいことをわくわくしながら実現していく幸せな状態を生み出していくことが本来求められているのだと思います。
「リーダー」と「リーダーのリーダー」しかいない、自律した人たちだけで構成され、その自律したリーダー同士がお互いを活かし合い、支え合い、協力し合う組織、社会または世界です。
いかがですか?
それでは今回はまず、メンバーや組織をリードする「リーダーのリーダー」ではなく、自分で自分をリードする「リーダー」という存在にどうしたらなれるか、を考えていきたいと思います。
2.「心理対比」を理解する
「心理対比」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
英語では、メンタルコントラスティングと言いますが、簡単に言えば自分が目指す「理想的な結果」と「現実の問題・障害」を心の中で対比するということです。
理想的な結果に対して、現実はどうなのか、そのネガティブな部分も含めて現実をありのままに見ることによって、理想的な結果を生み出すことへのモチベーションが自然と高まり、理想的な結果の実現が確実なものになっていくという考え方です。
結果に責任を持つ、自分で自分をリードする「リーダー」になるためには、この「心理対比」の考え方がとても重要です。
自分で自分をリードするには、「理想的な結果」=「目指す姿(ビジョン)」を明確に描くことがまず必要です。
「目指す姿(ビジョン)」がなければ自分をリードしていくドライブがかかりません。
ただ、その自分の「目指す姿(ビジョン)」に対する現実をネガティブな部分も含めてありのままに見つめることによって、さらに「目指す姿(ビジョン)」を実現しようという行動に自分を自然に駆り立てることになります。
要するに、明確な「目指す姿(ビジョン)」を追求し、同時に現実をしっかり見ることでそこに具体的なギャップが明らかとなり、課題が認識されて、こうしたらいいんじゃないかという発想が生まれ、何をするかを決断し、行動して、結果を生み出すという「リーダーの定義」にあった「リーダー」としての動きができるようになっていきます。
この上記の行動の結果もまた現実として見つめることによって、「目指す姿(ビジョン)」との新たなギャップが生まれ、新たな課題が認識され、発想し、決断し、行動して、結果を得るという自律的な試行錯誤のサイクルが回っていくことになり、「目指す姿(ビジョン)」の実現に近づいていくことになります。
このことはあなたも経験的にわかるのではないかと思います。
たとえば、エネルギッシュな人生を送るために、プロボクサーのような筋肉質のかっこいい身体になるという「目指す姿(ビジョン)」を掲げたとします。
ただイメージを抱いただけではなかなか自分の肉体を実際に変えていくことはできないことが多いと思います。
「目指す姿(ビジョン)=プロボクサーのような筋肉質の身体」に対して、体重を量ったり、ぶよぶよの自分の現実の身体を鏡で見たりということを同時に行うことで、健全な課題(「この1か月で2キロ体重を落とそう」など)が生まれ、そのためにジョギングを週2回から4回に増やし、ご飯は毎回お茶碗半分にしようなどの発想が生まれ、決断し、実際に行動することによって、「目指す姿(ビジョン)」を実現する可能性が高まっていくことになります。
理想を夢みているだけでもだめ、現実を見て批評したり、嘆いたりしているだけでもだめ。両方をしっかりと意識し、ありのままに見つめることで、現実を着実に変えていく、自分で自分をリードする「リーダー」になれるということです。
3.「目指す姿(ビジョン)」の描き方
自分で自分をリードするためには、自分を導いてくれるものが必要です。
それが、あなた自身が本当に心の底から実現したいと思う明確な「目指す姿(ビジョン)」です。
目に見えるように、具体的にイメージできる実現したい状態といってもいいでしょうね。
これが実現したら本当に心の底からうれしいと思える、わくわくする目標です。
この「目指す姿(ビジョン)」を描くことが、「リーダー」の最大の仕事です。自分を前に進ませる最大の原動力になるからです。
ではどうやって、自分がわくわくしながら実現したいと思う「目指す姿(ビジョン)」を描いたらよいのでしょうか?
単純ですが、2つのステップがあります。
①自分の「心の底からの本当の願い=人生理念」をまず明確にする
②「人生理念」を意識しながら、自分が本当に実現したい状態、「目指す姿(ビジョン)」をイメージする
ではまず、①自分の「心の底からの本当の願い=人生理念」をまず明確にすることから見ていきましょう。
①自分の「心の底からの本当の願い=人生理念」をまず明確にする
「人生理念」というのは、どんな現実や環境の中にあっても、自分は本来こういう生き方をしたい、そのためにこんな自分になりたいという、すべての人がもっている生きる上での根源的な願いです。
みなさんが普段意識しているかどうかは別として、すべての人がこの「人生理念」を持っています。
「自分は本来こういう生き方をしたい、そのためにこんな自分になりたい」なんて想いは今の自分は持ってないよという方もいるかもしれませんが、実はそれは言葉になっていないだけで、すべての人が持っているのです。
ちなみに私の人生理念は、「活き活きと輝く」です。単純でしょう。
活き活きと輝くような生き方をしたいですし、活き活きと輝く存在でありたいと願っています。
実はそれ以上に私は、世の中の人すべてが活き活きと輝く生き方をして欲しいと思っていますし、そうした生き方ができるように多くの人の支援をさせていただきたいと思っています。
この私の「活き活きと輝く」という人生理念は、私のビジネス・コーチングの先生である竹内直人さんに行っていただいた研修の中で、明確になり、言葉になりました。
研修の中で、竹内コーチが23の問いかけをしていくことで、出てきた私の本当の願いです。
その研修までは、自分の中には「活き活きと輝く」ということが自分の願いであるという認識はありませんでした。
この研修ではじめて言葉になったのですが、この「人生理念」が出てきたとき、何かホッとするような、懐かしいような、とても大事な人に久しぶりに会ったような感覚がありました。
現実対応の中で忘れていた自分の本来の想いを思い出したような感じです。
12年ぐらい前の研修でしたが、私の人生理念「活き活きと輝く」は現在も変わっていませんし、この人生理念が今の私をリードしています。
こうした研修やビジネスコーチのコーチング・セッションで「人生理念」を明確化することもできますが、基本は自分自身に「自分は本当はどんな生き方をしたいのか? そのためにどんな自分になりたいのか?」を問い続けることです。
でも今の厳しい状況の中で、上記の問いはすでに皆さんの中にあるのではないかと思います。
「求めよ、さらば与えられん」という言葉は、この自分の「人生理念」を見つけることを言っているのではないかと常々思っています。
「自分に問いかけよ、さらば与えられん」
②「人生理念」を意識しながら、自分が本当に実現したい状態、「目指す姿(ビジョン)」をイメージする
「人生理念」が言葉になり、明確になったら次はその「人生理念」に基づいて、こんな状態を実現したいという「目指す姿(ビジョン)」を明確に描きます。
「人生理念」もあなたをリードしますが、やや抽象的で、現実との対比が具体的にできないので、あなたの力強い発想・決断・行動を導くのはこの「目指す姿(ビジョン)」になります。
先ほどの例でいうと、「エネルギッシュな人生を送るために、プロボクサーのように筋肉質のかっこいい身体になる!」という目に浮かぶような具体的なイメージです。
繰り返しになりますが、この「目指す姿(ビジョン)」を明確に描くということが、自分で自分をリードする「リーダー」になるためにもっとも大事であり、最初にしなければならないことです。
この「目指す姿(ビジョン)」を描けない人、または描かない人は残念ながら自分で自分をリードする「リーダー」にはなれません。
この「目指す姿(ビジョン)」を描く際のポイントは、
①「人生理念(ミッション)」の実現に結びついていること
②実現することを考えると、うれしくなったり、わくわくすること
③視覚的にイメージできるように、数値も加えるなどなるべく具体的であること
の3つです。
ちなみに私の今の「目指す姿(ビジョン)」は、
「すべての人と組織が「理念(ミッション)」に基づくそれぞれのわくわくする「目指す姿(ビジョン)」を着実に実現できるように支援ができる業界最高水準の組織力強化コーチになる」
というものです。
ちなみに、組織力強化コーチという言葉は私の造語です。
クライアント企業が、「理念(ミッション)」に基づくそれぞれのわくわくする「目指す姿(ビジョン)」を着実に実現する組織力強化のプロセスを最大限支援できるコーチということでつけた肩書です。
組織開発を勉強していたときに、組織開発という組織を良くしたり、強化したりするプロセスは、「目指す姿(ビジョン)」を明確にして、現実と対比して、適切な行動を決めて、その実行をサポートするコーチングのプロセスそのものだなと気がつき、組織を本質的に強化していく取り組みを「組織力強化コーチング」と名付けました。
そして、先ほど申し上げた私の「目指す姿(ビジョン)」は、「活き活きと輝く」という「人生理念」と結びついていますし、このビジョンが実現したら多くの人と組織が活き活きと輝くはずなのでわくわくしますし、具体化もできていると思います。
もちろんこの「目指す姿(ビジョン)」は変わっていく可能性がありますが、私を確実にリードしてくれていますし、取り組むべき課題を生み出しています。
まとめ
今、一人ひとりが、自分で自分をリードする「リーダー」になることが求められています。
今後は、誰か特定の「リーダー」に頼ることができなくなってくると思います。
ですから、一人ひとりが自分で自分をリードする「リーダー」になる必要がありますが、そのためには、まず自分自身の「目指す姿(ビジョン)」を明確にする必要がありますし、そのビジョンの前提となる「人生理念」を明確にすることが、「リーダー」になるための起点になります。
そして、「目指す姿(ビジョン)」が明確になったら、あなたの周りで生じる現実をネガティブな部分、不安や怖い部分も含めて、ありのままに見つめてください。
現実をありのままに見つめることを習慣にするには、簡単な日記をつけることをお勧めします。
そして、「目指す姿(ビジョン)」を常に思い出し、同時に現実をありのままに見つめる中で生まれてくる課題に対しての発想を、素直に実行に移してください。
これが、自分で自分をリードする「リーダー」になるための、試行錯誤のサイクルです。
この試行錯誤のサイクルを回せるようになれば、あなたは自分で自分をリードする「リーダー」になれますし、人や組織をリードする「リーダー」にもなれます。
私も含めて、すべての人が自分で自分をリードする「リーダー」になり、共通の「目指す姿(ビジョン)」の実現に向けて、お互いを活かし合い、協力し合いたいですね。
何かを一緒に達成しようとすることほど楽しいことはありませんからね。
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