- 上司からのパワハラに悩んでいる
- 上司が同僚の一人にいつも辛く当たっている
- 上司が気分次第で暴言を吐く
このような上司に悩まされている人も多いのではないでしょうか。
そして、パワハラが原因で休職したり退職する人もいると思います。
今回は、このようなパワハラの被害を受けた場合の対処法。
それでもパワハラがなくならない場合の相談方法についてお話したいと思います。
1: パワハラとは

「パワハラ」という言葉を聞いたことがない。
そんな人は、ほとんどいないのではないでしょうか?
新聞でもニュースでも取り上げられることの多い言葉です。
でも、パワハラの意味を正しく知っている人は少ないようです。
パワハラとは「Power Harassment」の略。
この言葉は和製英語で、海外から伝わってきたものではありません。
「Power」は「権力や力」を表しています。
「Harassment」は「他者に対して、不愉快、威嚇的な態度を取る」という意味があります。
つまり会社での「パワハラ」は「職場での嫌がらせ」「職場でのいじめ」というところです。
パワハラは上司から部下に行われるケースが多いですが、同僚から同僚へ行われることもあります。
また、部下から上司に対して行われることもありますから、役職者から部下というだけではないことを覚えておきましょう。
そしてパワハラのやっかいな問題は、パワハラを行っている「加害者」に自覚がないことです。
よく新聞やニュースでも報じられますが
- 新人教育の一環だった
- 仕事上の指導だ
- 昔からの指導方法だ
という認識なので、本人は全くわかっていないこともあります。
ですから、被害者側は鬱病になることもありますし、精神的な不調から体調不良になることもあります。
パワハラで多い具体例を紹介しておきますと、
- 人格を否定する
- 学歴で差別する
- とうてい無理なノルマを与える
- 仕事をさせない
- 暴力
- 物を投げつける
- 叱責や言葉の暴力
- 無視、仲間外れ
- 残業の強制
など、あなたも知っておられるようなことが、この中にあるのではないでしょうか。
パワハラはあってはいけないことです。
しかし、パワハラの定義が曖昧であることも事実です。
加害者側と被害者側の定義が一致していないため、勇気を持って被害者側が訴えたのに、少しの定義のズレで何もなかったことになる。
そんなこともありえます。
そこで、次に厚生労働省がパワハラについて定義している内容をご紹介します。
2: パワハラの定義

パワハラの定義を知っておいてください。
この定義に当てはまると、十分にパワハラと考えられます。
(1)職務上の地位、人間関係などの職場内の優位性の利用
パワハラは職場での「力」「権力」を使った嫌がらせです。
職場での「権力」というと、上司や先輩からの嫌がらせが思い浮かぶと思います。
これがパワハラでもっとも多いパターンだと言えます。
ただ、例外もあり「職場内の優位性」を利用することで、部下が上司へパワハラを行うこともあります。
例えば、上司があまりITに詳しくない場合、部下が上司をバカにする嫌がらせを行うということもあるようです。
(2)業務の適正な範囲を超えて指示したり強要する
これは、どのようなことかと言いますと、業務に関係のない個人的な指示(命令)で使い走りをさせる。
仕事でミスをしたとき、土下座して謝罪を強要する。
こんなことが当てはまります。
(3)人格・尊厳を侵害する
暴力だけがパワハラではありません。
相手を侮辱するような言葉も、十分にパワハラです。
職場で無視することや、人間関係を切り離し孤立させることもパワハラです。
(4)嫌がらせが断続的
本当に指導のために叱責することもあるでしょう。
この場合は、一度叱責すれば終わりです。
しかしパワハラの場合は、一度ではなく断続的です。
断続的な嫌がらせはパワハラと判断されやすいですが、反対の場合はパワハラと判断されにくくなります。
(5)精神的・身体的な苦痛
ミスが続いた場合、上司は部下にミスが繰り返されないよう指導するため、叱責することがあります。
しかしパワハラの場合は、指導とは関係なく、相手を精神的・肉体的に追い込むことが目的になっています。
加害者側は優位な立場を利用して、立場上刃向かえない相手を追い込むことで、自分の優越感を満たしています。
(6)職場環境を悪化させる
当たり前ですが、パワハラを行う人がいると、職場環境は悪化します。
「次は自分かも」と、びくびくして仕事する人。
言いたいことも言えない雰囲気。
当然、組織全体のモチベーションは上がらず、生産性が下がる場合もあるでしょう。
3: パワハラの種類

パワハラの定義を踏まえ、パワハラは次のような種類に分けることができます。
どれか一つだけが行われていることは少ないです。
ほとんどの場合、複合してパワハラが行われています。
(1)身体的攻撃
パワハラという言葉のイメージは、この種類が多いのではないでしょうか。
もっとも一般的なのは
- 殴る
- 蹴る
- 胸ぐらをつかむ
- タバコの火を近づけたり、投げつけたりする
- 机など物にあたり大きな音などを出して威嚇する
- 物を投げつける
よく考えてみてください。
これらのことを職場ではなく街中で行えば「傷害」「暴力」です。
ということは、職場でも同じです。
職場だからと許されることではありません。
これらは「傷害」「暴力」なのです。
(2)精神的攻撃
言葉の暴力をイメージしてもらうのがわかりやすいですね。
- お前はダメなやつだ
- 給料泥棒だ
- 仕事ができるまで帰るな
また、人前で恥をかかせるように叱責したりバカにすることも同じです。
中には
- 罵声を浴びせる
- 脅す
などを行う人もいますから注意してください。
そして、身体的攻撃と同じで、言葉の暴力は犯罪です。
(3)人間関係からの切り離し
- 仲間外れにする
- 無視する
- 仕事を教えない
- 重要な連絡事項を教えない
これは、本当に陰湿な嫌がらせです。
十分にパワハラです。
(4)過大な要求
どう考えても要求された日時には終わらない量の仕事。
とうてい無理なノルマ。
こういうパワハラを行う人は、根性論や精神論を振りかざしてくることが多いのが特徴です。
(5)過小な要求
- 雑用ばかり
- 自分だけプロジェクトに参加させてもらえない
- コピーばかり取らされる
あなたのスキルの問題なら、スキルアップが必要になります。
しかし「○○プロジェクトへ参加してもらう」という理由を聞いていたにも関わらず、誰かの一言でいつまでもプロジェクトへ参加させてもらえなかったり、仕事が与えてもらえないのなら、それはパワハラです。
(6)個の侵害
厚生労働省は「個」と表現していますが、一般的には「プライベート」と言い換えても差し支えないと思います。
勤務中、勤務外に関係なく、プライベートなことを執拗に聞いてくる。
仕事が終わって家に帰っても、SNSなどを使って連絡を取ってくる。
男性から女性に対して行われることが多いパワハラです。
4: パワハラの対処法

まず、次のことを忘れないでください。
毎日パワハラに逢っていると「自分がダメだから」「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまいます。
しかし、あなたがダメなのではありません。
パワハラを行っている加害者が原因なのです。
ですから、絶対に一人で抱え込まないでください。
家族や友人に話すことはできませんか?
心を許せる同期はいませんか?
産業カウンセラに相談してみませんか?
このことを覚えておいてください。
その上で、これからお話する対処法が使えないか考えてみてください。
(1)身体的攻撃への対処法
まず、身体的攻撃は「傷害」「暴力」という犯罪です。
ですから証拠を残してください。
メモに「誰に、いつ、どこで、どのような攻撃を受けたのか」を残しましょう。
殴られたり蹴られたりした場合、痣になったところを写真で残し、病院へ治療に行って記録を残しましょう。
あまりにひどい場合は
- 証人を確保する
- スマホで録音する
- 壊れた物を写真で残す
証拠を全て残しておくことが大切です。
まちがっても、やり返してはいけません。
(2)精神的攻撃への対処法
暴言、罵声の場合は、スマホで録音しておきましょう。
身体的攻撃と同じように「証拠」が大切です。
嫌みや侮辱は、可能なら「無視」するのが一番。
おそらくあなた以外にも迷惑している人がいますから、味方を探して結束しましょう。
(3)人間関係からの切り離しへの対処法
一度は自分が原因かもと考えてみてください。
そして、自分から輪に近づいて話しかけてみてください。
でも、無視されているのなら、社内の人事や本部にある「パワハラ相談窓口」に相談してみてください。
そんな部署は無いとか、相談したけれど変わらない場合には、外部の機関である厚生労働省の「あかるい職場応援団」を見て、相談窓口に連絡してください。
(4)過大な要求への対処法
証拠を残しましょう。
特に仕事が指示された日と時間。
仕事の量。
要求された締め切り日時。
そして、あなたが行った残業時間。
これらの証拠を残して、人事部や本部のパワハラ相談窓口へ連絡してください。
それでも変わらない場合は、外部機関を活用しましょう。
(5)過小な要求への対処法
人事部や本部のパワハラ相談窓口へ連絡するのが一番ですが、転職を考えても良いでしょう。
よくあるのは「過小な要求=追い出し」ということもあります。
その場合は、転職や退職について慎重に考えてください。
(6)個の侵害への対処法
これは「セクハラ」も含んでいることが多いです。
他の対処法と同じく証拠を残すことが必要です。
- 事実を書いたメモ
- 相手からのメール
- 自分が返信したメール
- 第三者へ相談したメール
- 相手とやりとりした録音
などを忘れずに記録しておくことが必要です。
その上で、
- 仲間を作ってセクハラをやめるように求める
- はっきりと拒否を明確にする
- 人事部や会社の窓口へ相談する
それでも変わらないのなら、外部の機関に相談してください。
何よりも、証拠が大切です。
これを忘れないでください。
5: それでもなくならない時

パワハラは、パワハラを行っている側は「必要な指導」「これぐらいの強い責は当たり前」と考えて、本人に自覚がない場合もあります。
パワハラを受けたと思う側も、客観的に見れば「必要な叱責」をパワハラを受けたと思い込んでしまう場合もあります。
このようにパワハラは、明確に特定できないことが多いデリケートな問題です。
ですから、「これはパワハラにあたるのでは?」と思ったら、信頼できる誰かに相談することがとても大切です。
そして、誰かに相談する際のポイントは、証拠をもとに冷静に検討するということです。
繰り返しになりますが、まずは証拠を持って人事部や本部のパワハラ相談窓口に相談してください。
ただ人事部や本部のパワハラ相談窓口も、パワハラ対処のスキルや経験が少ない場合もありますので、納得できる対応が期待できない場合は、専門機関に相談することをお勧めします。
(1)外部機関に相談する
メンタルに関する相談なら「こころの耳」。
パワハラに関する相談なら「あかるい職場応援団」。
これらのサイトへアクセスして、相談することをおすすめします。
(2)弁護士に相談する
法的な視点からのアドバイスは心強いところです。
訴訟に発展したり、未払いの残業代などの請求にも味方になってくれます。
弁護士に相談する場合は、とにかく「証拠」が必要です。
証拠を持って相談してみてください。
(3)警察に被害届を出す
暴行や傷害により怪我をしたり、命の危険を感じた場合には、証拠を持って警察に相談してください。
しかし、警察は会社内のことには関与できません。
そして、会社内のことには、警察の動きは鈍いです。
パワハラから起こる犯罪としては
- 暴行
- 傷害
- 名誉毀損
- 侮辱
- 脅迫
- 強要
- 強制わいせつ
などの罪があります。
まずは「証拠」をもって「弁護士」に相談するのが一番です。
6: まとめ
パワハラは受けていても相談しにくいものです。
そして、毎日パワハラを受けていると「自分が原因」だと思ってしまいます。
しかし、パワハラは加害者が原因ですし、会社の中であってはいけないことなのです。
教育という言い訳を使う人もいますが、パワハラは教育ではなく犯罪だということを、誰もが認識する必要があるでしょう。
パワハラを受けているのなら、絶対に一人で抱え込んで悩まないでください。
あなたが気持ちよく活躍できる会社は他にもたくさんあります。
ぜひ、外部機関やカウンセラー、弁護士など、パワハラについての知識を持っている人に相談してみてください。
相談することは、恥ずかしいことではありません。
相談することは、勇気を持った行動ですし、何よりも大切な自分の心身を守ることになります。
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